
全国で増え続ける空き家。その背景には、相続放置や人口減少だけでなく、「高齢単身世帯の孤独死」という見えにくい問題があります。
警察庁の統計によれば、2024年に自宅で亡くなった一人暮らしの人は約7万6千人。そのうち65歳以上の高齢者は5万8,044人で、全体の約4分の3を占めています。自宅で亡くなり、発見までに時間がかかるケースも少なくありません。
出典:警察庁「令和6年中における警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者について」
https://www.npa.go.jp/news/release/2025/20250401002.html
年齢別の内訳:警察庁「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和6年)年齢階層別」
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/shitai/hitorigurashi/R6nennreikaisoubetu.pdf
孤独死は個人の問題として語られがちですが、実際には住宅の空き家化と密接に結びついています。
孤独死が空き家を生む構造
発見が遅れた場合、遺体の腐敗が進み、特殊清掃や消臭、リフォームが必要になることがあります。遺品整理や残置物撤去も重なると、費用が大きくなることがあります。
その結果、相続人が対応できず放置される、売却や賃貸が困難になる、「事故物件」として資産価値が下がる、といった状況が起こります。
管理されないままの住宅は、倒壊や火災、害虫の発生、不法侵入などのリスクを抱え、やがて地域全体の課題へと広がります。つまり孤独死は、単なる個人の不幸ではなく、住宅資産と地域環境に影響を及ぼす社会課題なのです。
地域とのつながりが死亡リスクを左右する
では、この連鎖を断ち切る方法はあるのでしょうか。東京都健康長寿医療センター研究所が埼玉県和光市の高齢者を6年間追跡した調査では、同居家族以外との交流(会う・電話やメールなど)が合わせて週1回未満で、かつ外出の頻度が2〜3日に1回程度以下の高齢者は、どちらにも当てはまらない高齢者と比べて、6年後の死亡率が2.2倍高かったと報告されています。
出典:東京都健康長寿医療センター「高齢期の社会的孤立と閉じこもり傾向による死亡リスク約2倍」(平成30年7月27日発表)
発表資料(公式サイトの掲載終了のため、インターネットアーカイブの保存版)
この調査は、「人とのつながり」と「外に出ること」の両方が、高齢期の健康に関わる可能性を示しています。地域に顔を出していれば、「最近見かけない」という小さな気づきが生まれます。その気づきこそが、孤独死の予防につながります。
見守りは空き家予防策でもある
高齢者が地域の中で緩やかにつながっていれば、万が一の際も早期発見につながり、住宅が長期間放置されるリスクは大きく下がります。
早期対応が可能になれば、適切な遺品整理、円滑な相続手続き、住まいの売却・活用が進みやすくなり、空き家化を防ぐことができます。
孤独死の予防は、そのまま空き家予防につながるのです。
「おうち終活」というもう一つの備え
もう一つ重要なのは、住まいについて事前に整理しておくことです。近年は「実家じまい」や「おうち終活」という言葉が広まりつつあります。人生の最終章を迎える前に、自宅や所有不動産をどうするかを考えておく取り組みです。
空き家再生協会では、終活段階から住まいの相談を受ける支援モデルを推進しています。協会認定の「おうち終活ノート」を活用し、本人・家族・地域が連携して備える仕組みづくりを進めています。
孤独死を防ぐこと、そして空き家を生まないこと。
その両方に共通するのは、「事前のつながり」と「事前の準備」です。
孤独死と空き家は、地域で防げる
孤独死も空き家も、放置すれば誰にとっても他人事ではありません。
高齢単身世帯が増加する今、これは全国どの地域でも起こり得る課題です。
地域のつながりを再構築すること。
そして住まいについて早めに考える文化を広げること。
それが、孤独死と空き家の連鎖を断ち切る第一歩になるのではないでしょうか。
【訂正】2026年9月17日、警察庁統計の65歳以上の割合、研究の定義と出典、根拠を確認できなかった記述を訂正しました。


