【現場レポート】“住まいの最後の砦”を支える——空き家と向き合う住宅支援事業


「なんか面白いな、普通の家とは違いますね。」
——内見中、Aさん(45)は少し驚いた表情を見せました。

ここは京都市の中心部にある築36年のアパート。部屋はきれいにリフォームされており、駅やスーパーも徒歩圏内。家賃はなんと4万円。周辺相場よりも1万円以上安く、「こんな条件で借りられるなんて…」と、多くの人が驚くはずです。

この物件を紹介したのは、Rennovator株式会社代表の松本知之さん。住宅支援事業の最前線に立つ活動が、いま注目を集めています。

住宅支援事業のきっかけ
松本さんが住宅支援に取り組み始めたのは、会社員時代に自らの物件を貸し出そうとした経験がきっかけでした。

「物件を誰かに貸そうとした時に『ご高齢の人だめですか?』『外国籍の人だめですか?』みたいなことを(不動産仲介業者に)当たり前のように言われる。すごく違和感があるなと」思ったそうです。

“借りたくても借りられない”という人たちが、実際にこんなに多くいる。松本さんはこの社会課題に向き合う決意を固め、2019年に会社を設立。

現在、入居希望者からの問い合わせは年間およそ1000件。その半数を「市役所」や「社会福祉協議会」などからの紹介が占めています。

安さの秘密は“空き家のリフォーム”
今回Aさんに紹介した物件は築36 年だがキッチンや床はリフォーム済み。近くにスーパーがあり駅も徒歩圏内。その家賃は。。。

松本さん
「4万円。広さは30平米強ぐらいはあると思います。(相場だと)5万円超えてくるんじゃないですか。京都駅まで歩けますし、4万円なんか(他に)絶対ないです」

安さを実現できている理由は何なのでしょうか?

松本さん
「空き家や、空室が埋まらないアパートとかを、安価で自分たちでリフォームして、ご高齢の人や家探しに困っている人々に提供しています。」

松本さんは、「空き家」や「空室」に悩むアパートなどの持ち主から購入したり、借りたりした物件を自分たちでリフォームし、住人が退去した際も清掃を自分たちで行い経費を削減。そうすることで物件を安く提供できると言います。

「一からやり直したい」——入居者の再出発を支える
Aさんは、コロナ感染をきっかけに心臓機能が低下。派遣の仕事が不安定になり、家賃を滞納。退去を迫られていました。

Aさん
「生活保護も考えたけど、それは自分のなかで違うなと。生活を立て直して、一からやり直したいんです」

居者の多くは賃貸契約を結ぶことが困難なのですが、一体どのようにして利益を生み出しているんでしょうか?

松本さんによりますと、これは逆転の発想で、賃貸契約を結ぶことが困難だからこそ同じ物件に長く住み続ける傾向があるため、家賃収入を安定的に得られると言います。

例えば入居者の収入が途絶えるなどした場合も、家賃の支払いに関して相談をして期限を伸ばすなど柔軟に対応するとのこと。密にコミュニケーションを取ることで家賃の滞能は1割未満に抑えられていて事業としてちゃんと成り立っているそうです。

食料支援・生活支援も充実
松本さんは、入居後の支援にも力を入れています。この日も、ある入居者の元を訪れ、フードバンクから提供されたカップ麺やチョコレートを届けていました。

「食料をもらうだけじゃなく、気持ちの面での信頼関係が大切なんです。だから、顔を合わせることを大事にしてます」

さらに、設備のトラブルにも迅速に対応。入居者との密なコミュニケーションが、トラブルや家賃滞納の予防につながっているそうです。

■自治体と連携するケースも
住宅の確保が難しい高齢者や低 所得者への支援ですが、実は民間が行った方が継続しやすいと言います。

NPO法人の支援だと、寄付や補助金という形での支援のため、規模を拡大することがなかなかできませんが、住宅支援事業を行う松本之さんは「住宅確保の支援が適正な利益を出す事業として成り立てば、より多くの人たちを救うことができる」と言っています。

京都市は、市営住宅の空き家を有効活用するため、松本さんの会社に物件の貸し出しを行っています。また大阪府寝屋川市の社会福祉協議会は住宅確保が難しい市民に松本さんの会社を紹介しているとのこと。担当者は「行政だけで対応すると入居までに時間がかかるが、申し込みの当日でも入居できる場合もあり対応が早い」と話しています。

「第3の選択肢」へ——リノベーターの未来図
行政が民間と協力して ビジネスモデルを新たに生み出す動きも出てきています。

東京都は低所得者層などを対象にした安価な賃貸 住宅を供給するため、今年度の予算に100億円を計上しています。都と民間と連携し、最大で200億円規模のファンドを立ち上げ、その資金をもとに空き家や中古マンションを活用した住宅を供給する方針です。

松本さんは「関西だけで1万件の物件を供給できれば、『民間賃貸』『公営住宅』に次ぐ“第3の選択肢”になれると思うんです」と語っています。

空き家や空き状態のアパートが活用され、住まいを求める人たちの希望になる。松本さんの取り組みは、空き家の価値を最大限に引き出しながら、地域にも人にもやさしい社会の形をつくり出そうとしています。

私たち空き家再生協会としても、こうした動きを応援し、空き家を活かした持続可能なまちづくりを共に考えていきたいと思います!

ご感想やお問い合わせは、お気軽に空き家再生協会までどうぞ。

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