日本では少子高齢化の進行により、空き家の増加が深刻な社会問題となっています。これに対応するため、政府は2023年12月に「改正空き家法」を施行し、適正管理されていない空き家へのペナルティを強化しました。また、不動産登記法や民法も相次いで改正され、相続や売却に関するルールが大きく変わっています。
これらの法改正を理解し、適切に対処しないと、思わぬ税負担や行政指導を受けるリスクがあります。そこで今回は、空き家所有者が特に押さえておくべき 8つの重要ポイント を分かりやすく解説します。
目次
法改正 1️⃣ 固定資産税が最大4.2倍!「管理不全空き家」に要注意
法改正 2️⃣ 「特定空き家」に認定されると取り壊しリスク大
法改正 3️⃣ 相続登記の義務化!違反すると10万円以下の過料も
法改正 4️⃣ 相続した土地を国が引き取ってくれる新制度とは?
法改正 5️⃣ 空き家を相続したら3年以内の売却で税負担を軽減
法改正 6️⃣ 相続人に行方不明者がいても売却・処分がしやすくなった
法改正 7️⃣ 「再建築不可物件」でも建て替え可能になる特例
法改正 8️⃣ 相続放棄すれば空き家管理の義務から解放される?
空き家を適切に管理し、法律改正を上手に活用することで、余計な負担を回避することができます。それでは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう!
1️⃣ 固定資産税が最大4.2倍!「管理不全空き家」に要注意
空き家問題が深刻化する中、国は「放置空き家」に対する規制を強化しています。特に、これまでの「特定空き家」に加え、新たに「管理不全空き家」というカテゴリーが導入され、固定資産税の優遇措置が解除されることになりました。
「特定空き家」とは?これまでの問題点
これまで自治体が「特定空き家」に認定するのは、 倒壊の恐れがあるなど、周囲に危険を及ぼすほど劣化した空き家 でした。そのため、たとえ荒れ果てた状態でも、一定の基準を満たすまでは所有者へのペナルティはありませんでした。
しかし、近隣住民からすれば「危ないし、景観も悪い。更地にしてほしい」と思うのが本音です。しかし、空き家所有者が簡単に取り壊しに踏み切らなかったのには理由があります。 どんなに古くても家が建っているだけで、固定資産税の軽減措置が適用されるためです。逆に更地にすると、固定資産税が最大で約6倍に跳ね上がるため、放置を選ぶ人が後を絶ちませんでした。
「管理不全空き家」に認定されると固定資産税が最大4.2倍!
しかし、「家が建っていればOK」という時代は終わりました。2023年の改正空き家法により、「管理不全空き家」という新たな区分が設けられました。これは、 特定空き家になる恐れがある空き家を指し、自治体が認定すると、特定空き家と同様に固定資産税の軽減措置が解除されることになります。
この結果、管理不全空き家に認定された時点で、固定資産税が最大4.2倍に増額されることになり、放置による金銭的負担が一気に増すことになります。
空き家所有者はどうすればいい?
この新ルールにより、「古いけれどまだ大丈夫」と放置していた空き家も、管理不全とみなされるリスクが高まりました。
今後は、
✅ 定期的な点検・修繕を行い、劣化を防ぐ
✅ 必要に応じて売却や賃貸など、利活用を検討する
✅ 解体する場合の費用や補助制度について自治体に相談する
といった対応が求められます。 空き家を放置すると、大幅な税負担増につながる時代になったということを認識し、早めの対策を検討しましょう。
2️⃣ 「特定空き家」に認定されると取り壊しリスク大
空き家を放置していると、ある日突然「特定空き家」に認定され、最終的には強制的に取り壊される可能性があります。特に 改正空き家法の施行により、自治体の判断で迅速に撤去できる仕組み が強化されました。
「特定空き家」とは?
自治体が 「特定空き家」 に認定するのは、次のような状態にある空き家です。
① 倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある状態
② アスベスト(石綿)の飛散や、ゴミの異臭発生など、著しく衛生上有害となる恐れがある状態
③ 適切な管理がされておらず、著しく景観を損なっている状態
④ 立木の枝の越境や、住みついた動物の糞尿などが周辺の生活環境に悪影響を与えている状態
このような空き家は、 近隣住民にとって迷惑なだけでなく、倒壊や火災のリスクが高まるため、自治体が「特定空き家」に指定し、撤去を命じるケースが増えています。
「特定空き家」に認定されるとどうなる?
自治体が 「特定空き家」と認定すると、次のステップで取り壊しが進みます。
🏠 助言・指導 → 勧告(固定資産税の特例解除) → 命令(50万円以下の罰金) → 行政代執行(強制撤去)
勧告の段階で、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が一気に増大。 さらに、所有者が改善を行わない場合、命令に従わないと50万円以下の罰金が科せられ、それでも放置すると 最終的には行政代執行(自治体による強制撤去)の対象になります。
法改正により、特定空き家の撤去がスピードアップ!
従来、行政代執行には 所有者への命令が必要 で、撤去までに長い時間がかかっていました。
しかし、改正空き家法により、緊急性がある場合には「命令なし」で即時撤去が可能になりました。
💡 しかも、代執行の費用は全額、空き家の持ち主に請求されます。
もし支払えない場合は、 財産が差し押さえられる ことになり、たとえ破産しても支払い義務は免除されません。
空き家を所有している方は要注意!
これまで 「放置していても、すぐには撤去されないだろう」と考えていた人も、法改正により状況が大きく変わりました。
✅ 管理状態が悪いと、「特定空き家」に指定されるリスクが高まる
✅ 撤去費用は所有者が負担。支払えなければ財産が差し押さえられる
✅ 今後、自治体による空き家の取り締まりが一層厳しくなる
放置してしまうと大きなリスクを抱えることになるため、 定期的な管理や売却、解体を早めに検討することが重要です。
3️⃣ 相続登記の義務化!違反すると10万円以下の過料も
これまで、不動産を相続しても登記(名義変更)は義務ではなく、任意でした。しかし、この 相続登記の放置が「所有者不明土地」や「空き家問題」の大きな原因 となっていました。
そこで、 2024年4月から「相続登記の義務化」がスタート! 正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料(罰則) が課せられる可能性があります。
なぜ相続登記が義務化されたのか?
土地や建物を 親などから相続した場合、正式に自分の名義にするには「相続登記」が必要 です。
ところが、これまでは 相続登記に期限がなく、行わなくても特に罰則がなかった ため、登記をしないまま放置されるケースが多くありました。
その結果…
✅ 誰が所有者なのかわからない土地・建物が増加
✅ 老朽化した空き家が放置され、倒壊や防犯・防災のリスクが上昇
✅ 公共事業や災害復旧の際に所有者不明の土地が障害となる
こうした問題を解決するため、 相続登記を義務化 し、早期に名義を変更する仕組みが整えられました。
相続登記の期限と罰則
2024年4月以降、 不動産を相続した人は「相続を知った日から3年以内」に登記を行うことが義務付けられます。
✅ 期限を過ぎると、10万円以下の過料(罰則)が科される可能性あり!
✅ 制度開始前(2024年4月より前)に相続が発生したケースも対象
つまり、「今まで放置していた相続不動産も、義務化の対象になる」ということです。
相続人同士で話し合いがまとまらない場合は?
相続登記をしたくても、 相続人同士の遺産分割協議が進まない場合や、相続人の中に行方不明者がいる場合 もあります。
そんなときは、 「相続人申告登記」 を行うことで、相続登記の義務を果たしたとみなされ、過料が免除されます。
✅ 登記名義人が亡くなったこと
✅ 自分が相続人であること
この 2点を3年以内に申告すれば、過料なしで対応可能です。
4️⃣ 相続した土地を国が引き取ってくれる新制度とは?
土地の維持管理に困っている相続人が、一定の条件を満たせば 国に引き取ってもらうことが可能 になりました。
相続した土地を持ち続けるリスクとは?
不動産を相続すると、その土地を所有するだけで…
・ 固定資産税の負担が発生
・ 草刈りやメンテナンス費用がかかる
・ 買い手・借り手がいないと、維持し続けるしかない
「売るに売れない」「手放したくても手放せない」といった状況が続くと、管理が行き届かず、 荒れ果てた空き家や放置土地が増える原因になります。
相続土地国庫帰属制度とは?
こうした 相続人の負担を軽減するために、2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。
・ 不要な土地を国に引き取ってもらえる制度
・ 宅地・田畑・山林など幅広い土地が対象
・ 手続きを行い、審査を通過すれば国庫に帰属
ただし、以下のような条件があります。
🚫 建物がある場合は対象外(空き家は撤去が必要)
💰 引き取りが決まったら、10年分の管理費用相当額(約20万円)を納付
手続きの流れ
1 相続した人が申請(法務局へ)
2 法務局が審査を実施(要件を満たしているか確認)
3 審査通過後、10年分の管理費相当額を納付
4 国庫に帰属(国が引き取り)
引き取ってもらえない土地とは?
国が引き取る土地には 一定の条件があり、以下の場合は対象外 です。
❌ 建物が立っている(空き家がある場合は撤去が必要)
❌ 他人が使用権を持っている(賃貸契約や借地権がある土地)
❌ 地下に産業廃棄物などが埋まっている(汚染リスクのある土地)
❌ 急傾斜地(崖)のある土地(崩落の危険があるため)
❌ 境界線がはっきりしない土地(所有権トラブルを避けるため)
5️⃣ 空き家を相続したら3年以内の売却で税負担を軽減!
相続した空き家を 3年以内に売却すると、最大3,000万円の控除が受けられる特例があります。
空き家を放置すると税負担が増える!?
相続で取得した空き家や土地を売却し、利益が出ると 不動産譲渡所得税 がかかります。
特に都市部では地価が上昇しているため、
・ 相続税+不動産譲渡所得税の二重の負担
・ 売却すると税金が高くなるので放置
といった問題が発生しやすく、結果として 空き家が放置される原因となっていました。
3年以内の売却で最大3,000万円の控除が適用!
このような事態を防ぐため、空き家やその敷地を相続開始から3年以内に売却すると、売却益から最大3,000万円を控除できる特例が設けられています。
✅ 売却によって得た所得から最大3,000万円まで控除!
✅ 控除を活用すれば、不動産譲渡所得税の負担を大幅に軽減可能!
2024年の税制改正で要件が緩和!
以前は、この特例を受けるために…
✔ 売却前に売主が空き家を撤去して更地にする
✔ もしくは耐震改修を行う
という条件がありました。
しかし、2024年1月1日以降の売却から、
✅ 空き家を現状のまま売却しても控除が適用可能!
✅ 買主負担で解体やリフォーム工事を行った場合も対象!
と要件が拡充されました。
特例の対象となるケース
✔ 相続開始直前に被相続人が老人ホームに入所していた場合も対象
✔ 売主ではなく買主が耐震改修や空き家の解体を行った場合でもOK
6️⃣ 相続人に行方不明者がいても売却・処分がしやすくなった
親が亡くなった後、家や土地を兄弟姉妹で相続し、共有名義 にするケースは少なくありません。旧民法では、共有の建物や土地を修繕・整備するには全員の同意が必要とされていました。
例えば、兄弟3人で空き家を共有していた場合、2人が修繕を希望しても、1人が反対したり、行方不明で連絡がつかなかったりすると、まったく手をつけられない 状況が発生してしまいます。その結果、空き家が放置され、老朽化が進んでしまうケースが多くありました。
民法改正で「軽微な変更」が過半数の同意で可能に!
しかし、民法の改正によって、外観・構造・機能・用途などが大きく変わるものでなければ、共有者の持ち分の過半数の同意で変更ができるようになりました。
例えば、共有者が3人いて、それぞれ3分の1ずつ所有している場合、2人の同意があれば、修繕や整備が可能になります。仮に1人が行方不明でも、空き家の維持管理を進めることができ、管理不全化を防ぐことができます。
売却や処分がスムーズに進む可能性も 今回の改正により、行方不明の共有者がいても管理がしやすくなったことで、空き家の売却や活用のハードルも下がることが期待されます。以前は、共有者全員の同意が取れずに空き家が放置されるケースが多かったですが、スムーズに処分を進められる環境が整いつつあります。
行方不明の共有者がいる場合でも、適切な手続きをとることで、空き家の老朽化や放置を防ぐことができます。相続した不動産の管理に困ったら、早めに専門家に相談するのがおすすめです。
7️⃣ 「再建築不可物件」でも建て替え可能になる特例
日本の建築基準法では、防火対策や災害時の避難経路、緊急車両の通行を確保するために「接道義務」が定められています。しかし、法律が制定される前に建てられた古い住宅の中には、敷地が基準を満たす道路に接していないものも多くあります。
こうした物件は「再建築不可物件」とされ、新たに建て替えたり大規模な改築をしたりすることが認められず、結果として空き家になったまま放置されるケースが増えていました。
新たな特例で「再建築不可物件」の活用が可能に!
2024年の改正空き家法では、こうした空き家の再生を促すために、市区町村が重点的に空き家の活用を進めるエリアを「空き家等活用促進区域」として指定できる制度が設けられました。
この区域内の物件については、市区町村が都道府県と協議し、適切な指針を定めることで、前面道路の幅が4メートル未満であっても、安全確保を前提に特例的に建て替えや改築が可能になります。これにより、これまで活用が難しかった再建築不可物件の利活用が大きく進むことが期待されています。
古民家カフェなど、新たな用途への転用も可能に! また、これまでは住宅しか建てられなかった用途地域でも、特例により古民家をカフェや店舗として活用できる など、空き家の有効活用がより柔軟に進められる仕組みが導入されました。
再建築不可だからと諦めず、活用の可能性をチェック! これまで「再建築不可」として放置されていた物件でも、新たなルールのもとで活用が可能になるケースがあります。対象区域の確認や具体的な活用方法については、自治体の窓口や専門家に相談することが重要です。
この新制度を活用すれば、空き家問題の解決だけでなく、地域の活性化にもつながる可能性があります。もし相続した空き家が「再建築不可物件」だった場合でも、ぜひ新たな活用の道を探ってみましょう。
8️⃣ 相続放棄すれば空き家管理の義務から解放される?
相続する不動産は、必ずしも実家だけとは限りません。たとえば、子どものいない叔父や叔母の家、あるいは親が相続して放置していた祖父母の家など、自分にとって使う予定もなく、思い入れもない不動産を突然相続するケースがあります。
このような場合、「相続放棄」をすれば負担から解放されるのでは? と思うかもしれません。しかし、旧民法では、たとえ相続人全員が相続放棄をしても、空き家の管理責任からは逃れられません でした。相続放棄後も、空き家が荒れ果てて近隣に迷惑をかけた場合には、放棄したはずの相続人が管理責任を負うことになっていたのです。
民法改正で管理義務が大幅に軽減!
しかし、2023年4月の民法改正 により、相続放棄後の管理責任の範囲が変更されました。相続放棄後も管理責任が残るのは、「放棄時点で空き家を占有していた人」のみとなったのです。
つまり、もともと空き家に住んでいなかった相続人であれば、相続放棄をすることで管理義務から完全に解放されることになりました。これにより、空き家の管理負担を避けたい相続人にとって、大きな改善がなされたと言えます。
相続放棄の注意点!すべての財産を放棄することに
ただし、相続放棄をすると不動産だけでなく、預貯金などの財産もすべて放棄することになります。空き家の管理負担を避けるために相続放棄をした結果、受け取れるはずだった財産まで手放すことになる可能性があるため、事前にしっかりと検討することが重要です。
放棄した空き家はどうなる?
相続人全員が相続放棄をした場合、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任し、空き家の清算を行います。最終的に、売却されるか処分された後、残った財産は国庫に帰属します。
以上、空き家に関する法改正や実際にあった事例など、さまざまな変化が進んでいます。これからも空き家問題を解決していくためには、最新の情報や知識を常にアップデートし、学び続けることが重要です。
🏠空き家再生協会で一緒に空き家について学びませんか?
空き家再生協会では、定期的に勉強会を開催し、空き家に関する最新情報や知識を共有する場を提供しています。もし、空き家に関して一緒に学び、知識を深めていきたいという方がいれば、ぜひ私たちと一緒に勉強していきましょう。皆様の参加をお待ちしています。