2023年12月「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部が改正され、新たな動きが注目されています。
この法律は、全国的な課題となっている空き家問題を解決するために制定され、改正によってさらなる対策強化が図られるようになりました。
国土交通省がまとめている関連情報ページはこちら:
空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)
当ブログでは、初めてこのテーマに触れる方にも理解していただけるようわかりやすく発信して行きます!
空家措置法改正の背景
近年、空き家の増加が社会問題として盛んに取り上げられています。放置された空き家は地域の景観を損ない、防犯上のリスクや災害時の危険性を高めています。
国土交通省の発表によると、1998年から2018年の20年間で、使用目的のない空き家は「1.9倍」に増加しました。また空家措置法自体は2014年に制定されましたが、建物が将来的に「特定空家」という区分になってから対応するのでは限界がある(遅い)と判断され、国や自治体がより強力に対策を講じる必要が生じたため、法律の改正が行われました。
何が変わったのか?法改正の主な内容
空家措置法の改正では、以下の3つのポイントが重要とされています:
1. 空き家の活用拡大
・「空家等活用促進区域」を定め、市区町村が中心となって空き家の用途変更や建替えを推進。
・所有者不在の空き家に対し、市区町村が裁判所に、所有者の代わりに処分を行う「財産管理人」の選出を請求することが可能に。
・「空家等管理活用支援法人」の設立で、所有者や自治体を支援する体制が整備される。
2. 管理の確保
・新たに「管理不全空家」の区分を追加。特定空家になる前に指導・勧告が可能に。
・勧告を受けた空き家は固定資産税の住宅用地特例が解除。
・空き家の所有者の代わりに建物を管理する「管理不全建物管理人」の選出を、市区町村が裁判所に請求可能に。
・電力会社等が管理する所有者情報を自治体が要求可能に、これによって所有者の把握がスムーズに行われることが期待される。
3. 特定空家の除去等
・緊急時には、猶予を設けず速やかに代執行を実施可能。
・相続放棄や所有者不明の空き家に対して、市区町村が財産管理人を選出し、修理・処分を実行可能に。
・特定空家への「報告徴収権」を市区町村長に付与することで、勧告や命令を円滑化。
空き家再生士としての視点
事業内容によっては、空き家の取引や、将来的に空き家となる可能性のある物件について相談を受け付ける不動産会社も少なくありません。顧客が不当な不利益を被ったり、予期せぬトラブルに巻き込まれたりしないよう、関連する法律を適切に説明することは、地域の不動産会社の重要な役割のひとつです。
ここでは、空家措置法の改正を受けて、不動産会社が求められる対応を4つのポイントに絞ってご紹介します。
1. 顧客への「空家措置法」の説明
空き家の売却、リフォーム、または今後の管理方法について相談を受けた際には、必要に応じて「空家措置法」の内容をわかりやすく説明しましょう。特に、改正により一定の条件を満たした空き家は、固定資産税の住宅用地特例が適用外となり、税負担が大幅に増加する可能性がある点を伝えることが重要です。
また、放置し続けると自治体から指導や勧告を受ける可能性があるため、早めの対応を勧めることも大切です。説明が複雑になる場合には、空家措置法に関するポイントを簡潔にまとめた資料を用意して、顧客とのコミュニケーションを円滑に進める工夫をするとよいでしょう。
2. 空き家対策に関する財政・金融・税制支援の紹介
空き家を処分したり有効活用したりしたいものの、資金面で不安を抱える顧客には、適切な支援策を紹介することが効果的です。
多くの自治体では空き家活用を促進するための補助金制度を提供しています。また、国の制度では、被相続人の居住用財産(空き家)を売却した際に、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例があります。
さらに、空き家の取得やリフォームを対象とした住宅ローンの金利優遇も利用可能です。事前にこれらの支援制度を把握しておくことで、顧客一人ひとりに合った提案ができるよう準備を整えましょう。
3. 空き家相談への対応と専門家の紹介
顧客が「空き家の処分や活用に本格的に取り組みたい」と希望する場合に備え、不動産会社として空き家相談に対応できる体制を構築することが重要です。
社内スタッフが相談を受ける際には、空き家管理士、空き家再生士、相続診断士などの資格取得を検討するのも一つの方法です。また、必要に応じて司法書士や同業の専門家、自治体の相談窓口などの専門機関を紹介することで、顧客が安心して次のステップに進めるようサポートしましょう。
4. 空き家を活用したビジネスの提案と展開
空き家の状態を確認したうえで、取り壊し以外の活用方法を提案することも有効です。例えば、立地条件が良い物件であれば、一度建物を解体してコインパーキングにすることで、顧客が収益を得られる可能性があります。
また、自社で物件を買い取り、リノベーションして宿泊施設や店舗として活用するなど、新たなビジネスの展開にもつなげられます。古い建物でも、工夫次第で再利用が可能なケースは多いため、ビジネスとしての可能性を常に視野に入れ、積極的に提案することを心がけましょう。
空き家問題解決のためにできること
空き家問題に関心を持つ皆さんは、ぜひあなたが住む地域の空き家活用や対策に目を向けてみてください。
また空き家再生士の資格取得を通じて専門知識を身につけることで、さらに実践的な活動が可能になります。
空き家再生協会について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
空家対策特措法は、空き家再生を実践的に進める上で知っておくべき大切な法律です。
この機会にぜひ理解を深め、一緒に空き家問題に取り組んでいきましょう!